無事、おねえさんと共にグリーンステージにたどり着いた私。
時刻は9時過ぎ。
安心はできたが、ここからが勝負どころである。
なんせ、達朗の出番は、夜19時。大トリ1個前。
登場順は5番目だが、時間としてはあと10時間あるのだ!!
その日の苗場の気温はおよそ35.5℃。新潟とはいえちゃんと夏だ。
客席には強い日差しが容赦なく照り付ける。
※それもあり、ステージ後方の芝生エリアでは木陰の争奪戦が行われていた。
一言でいえば、暑さとの戦いであった。
日傘もさせないため、みな帽子やハンディファン、ネッククーラーなど、それぞれの日よけ対策を身に着けている。
私も両親の助けによって仕上げられた、「ぼくのかんがえたさいきょうのひやけたいさく」を身に着けて臨んでいたし、2L+500mlのペットボトルとゼリーや塩分タブレット、そのほか冷感グッズで、準備は満タンなはずだ。
ちなみに、グリーンステージのいちばん最初のステージは11時から。
早速約2時間の空き時間で肩慣らしだ、とゴクリと唾をのんでいたが、意外にも時間は早く過ぎ去った。
それもそのはず。フジロックどころか、野外ステージがはじめてなので、ステージセットやスタッフさんのお仕事風景、リハ風景を見てるだけで退屈しないし、
なにより、お姉さんが隣にいてくれるので、お互いの体調を気遣いあい、他愛ない話をしていると、あっという間に時間は過ぎ去る。
そんなわけで、時刻は間もなく11時。記念すべきフジロック2日目、グリーンステージのトップバッターが、
私にとっての生まれて初めてのフジロックのステージが、始まる。
.......
わ..............きた!!!!!!
あ...あれは!?!?
は、ハムと、ウニ!?!?!?!?
....ご紹介が遅れて恐縮だが、奇抜な出で立ちで登場した彼らは正体は、CA7RIEL & Paco Amoroso。(カトリエル&パコ・アモロソ)通称カトパコは、この10年で最も画期的といわれるアルゼンチンの音楽デュオ。
幼なじみだった2人がコラボレーションを始め、2019年にトラップ、ヒップホップ、ポップを大胆に融合させたスタイルでデビュー。
.....らしい。というのも、私は彼らのことを(恐縮なことに)全く知らなかった。
つまりは、彼らとそのファンにとって、今回の日本初来日&フジロック初主演がどれ程尊いことなのか、贅沢にも知る由がなかったのだ。
↓以下記事 参照
そうしてはじまった彼らのステージは、
一曲目から圧巻だった。
「DUMBAI」という曲で始まった彼らのパフォーマンス。
曲を知らない私でも、あっという間に気持ちも体も持ってかれて、一瞬で「どぅんどぅんどぅんどぅんどぅんどぅんばい♫」と口ずさみ、体は横に揺れていた。
モニター上には、彼らの姿と共に、Google翻訳されたかのような不自然な日本語訳が字幕で出ている。
(いや、とはいってもありがたい。スペイン語わからんし!)
メロディーと同じくらい歌詞を重要視する私は、しっかりと翻訳を確認する。
どれどれ、
Si preguntan qué pasó, yo estaba ahí, yo lo viví
「何が起きたか聞かれたら、僕はそこにいたし、それを体験した」
Si te digo que no sé, vos relajá, ya va a venir
「わからないって言ったら、落ち着けよ、いずれ来るさ」
Todo tan dumbai, todo tan wow wow
「すべてがドゥンバイ、すべてがワオワオ」
(....うん! 考えるのやめよう!最高~~~~~!!!!!)
そう、彼らの音楽は、ジャンルも言語も国も超え、聴く者を魅了し興奮させるバイブスがあるのだ。
2曲目の「BABY GANGSTA」、5曲目の「IMPOSTOR」、超クールで気に入った。今ではすっかりお気に入りプレイリストだ。
さらに、曲が進むごとに歌声やパフォーマンスだけではなく、彼らのキャラクター性やカリスマ的魅力にとりつかれる。
ウニのようなトゲトゲオールブラックに身を包んだ方がカトリエルさん。スタイルの良い、長~い手足を上手に使いこなし、常にノリノリで、メタルっぽい早口ラップも鬼クール。
お中元のハムのような超かわいいピンクの衣装に身を包んだ方が、パコさん。彼の甘くてかわいいビジュアルとハスキーで儚い歌声。サングラスを外した時のつぶらな瞳に「くぅ~ん」という子犬の幻聴が聞こえたほどだ。
幼馴染の二人が出せる、唯一無二の相棒感、悪ガキコンビ感も、ファンにとってたまらない要素のひとつなんだろうな~と見ていて思った。
それぞれのソロも楽しみ、ショーは終盤に近付く。
クライマックスで必ずやる曲。 タイトルの「EL DIA DEL AMIGO」は、訳して、"友達の日"という意味らしい。
永遠の友情を誓い合う歌で、幼馴染の二人にぴったりだ。なおかつ、今ここにいる日本人と彼らの友情を喜び歌うような、そんな素敵な一曲だった。
陽気なサウンドとは裏腹に、「おまえが橋から飛び降りたら後を追うぜ」「俺が裏切ったら殺せ、裏切ったら死ね」(意訳)といった激重の友情につい笑って、踊ってしまった。
いよいよ、本当のラストは「EL UNICO」
あぁ、終わってしまう。彼らに会えてよかった。フジロックに来てよかった。
世界には信じられない才能と、私の知らない素敵な音楽であふれているんだな。
アルゼンチンから来た、悪ガキ二人組が、私にそれを教えてくれた。
惜しまりながら、大きな愛を互いに伝えながら、彼らは去っていった。
ー おねえさんは、「ディズニーみたいだったね」と笑いながら感想を述べた。
たしかに、まるでディズニーキャラクターのようなルックスとチャーミングさで万人を惹き付け、
テーマパークのアトラクションに乗った後のような、興奮と爽快感を味合わせてくれる彼らにぴったりな表現だ、と思った。
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はじめてのステージを体験し、私のテンションも体温もうなぎ登り。
水分/栄養補給をしつつ、おねえさんに話しかける。
「来ますね、つぎですね!!」
そう、次はいよいよ、おねえさんの大本命、
"君島大空 合奏形態" の登場だ。
大人でクールなおねえさんも、最推しの登場を前にどことなくソワソワ。
ここでなんと、君島さんたちは、リハの段階で全員登場。
良い意味で、高校軽音部のようなノリで、仲睦まじげに会話をしながらチューニング。
最後には、「君島大空、13時からです、よろしくおねがいしまーす」と、文化祭のステージ前のような気軽さで去っていった。
(若いのに余裕があってすごいわ~)
いやいや、若いとはいえ彼らは、新人アーティストの登竜門ステージ「ROOKIE A GOGO」からメインステージ(グリーンステージ)まで駆け上ってきた実力者なのだ。楽しみだ。
そしていよいよ、本番。
Introの「いのちの歌」から、「除」という曲に移り変わる。
.
わ、わぁ、、、、すごい、カトパコとは違った種類の衝撃波と鳥肌が私を襲う。
(う、うまれてはじめてきく音楽だ)
まるで、この世に生を受けて間もない赤子の様に彼らの音楽を享受する。
おねえさんが、何度も何度も「君島くんの音楽は、絶対に生で聞くからこそいいの」「音源じゃダメなの」と繰り返した意味が、少しわかったような気がした。
どのアーティストも、生のパフォーマンスに勝るものはないだろうが、
目の前にあるギター、ベース、ドラム、そして、君島くんの口から発せられる歌声は、
とても美しく、一本の映画をみているような気持ちにさせられた。
専門知識のない私では到底語彙が足りないので、みなさんにぜひライブを見に行ってほしい。
私は「19℃」という曲が特に気に入った!
あらたなツアー開催もその場でサプライズ発表され、おねえさんの幸せを共に分かち合うことができた。
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ー そうか、フェスの醍醐味ってこれだな。こういうことなんだな。
前のステージの余韻が抜けないまま、また違うジャンルの音楽が、違うアプローチで己を感動させに、人生を影響しにやってくる。
いろんな国から、いろんな人が。
心を揺らしてくれる。
みんながフェスに行くわけがわかった。
一日のうちで、こんなに幸福に、心が忙しいことはないな。
(さぁ、つぎは...!!)
実は、次のアーティストは、私が達郎の次に楽しみにしていた方だ。
それが、STUTSくん(Band Set)!
まだピチピチJK時代、「高校ラップ選手権」をきっかけにヒップホップの世界にはまり、「フリースタイルダンジョン」を未漁った。
それだけでは飽き足らず、YouTubeでアマチュアからプロまで多くのラップを聴いた。
ライム、フロウ、パンチライン、
いろんな言葉も覚えた。
石原裕次郎やフィンガー5をはじめとした昭和歌謡とヒップホップ、その二足の草鞋を履いていた女子高生は数少ないだろう。
大学生、社会人になっても、ずーっといまだにヒップホップをこよなく愛してる。
もちろん、STUTSくんも好きで、なかでもPUMPEEさんとの「夜をつかいはたして」という名曲には思い入れがある。
社会人なりたてで、通勤電車にも嫌気が差し、職場に足が近づくたび緊張感に包まれていた頃。
そんなどうしようもない自分の感情を発散するみたいに、何度も何度も聞いていた、私にとってのファイトソングだ。
(一体どんなゲストが来るんだろう..)
期待に胸を膨らませながらリハの様子を眺めていると、STUTSくん本人が出てきてびっくりした。
さらに...
ぽつ、ぽつ。
ー 雨が降り出す。
き、きた~~~!!!フジロック名物、「突然の雨」!思わずテンションが、なぜか上がってしまう。
みんな、訓練されたソルジャーの様に雨具を身に着け始める。
私もそれに倣って、ポンチョを装着する。
ステージ上でも、機材を守るためにスタッフさんたちがキビキビと動いている。
いやあ、かなり強い雨だぞ。
STUTSくん始まる直前にかあ..
醍醐味とは言え、雨に対して少しの残念さを感じていると.....
ー ステージに間違えて上がった少年のような笑顔と、腰が低すぎてもはや地面を貫通しそうな謙虚さで、改めてSTUTSくん登場!!
か、かわいい~っ
周りからも同様のリアクション。
なんだろうな、蛙亭の中野さんのようなかわいさなんだよなあ。
しかし、演奏が始まると一転、超クールで信じられない才能に溢れた、
ー 本物の「STUTS」がそこにいた。
..さて、ここからは、全セトリとともにステージを爆速で振り返っていく。達郎以外でセトリを全て紹介するのは初となるひいき加減だが、なんせまあ、ヘッズなので。許して。
1.Renaissance Beat
はじまった!かっこいい!
雨が降りしきる中、背景にSTUTSの文字が光る。
2.One
記念すべき1人目のゲスト、tofubeatsさんが登場!!
※ネタバレ=この後えげつない数のゲストが続々登場します。
わーーー、私いま、フジロックで初の日本語ラップを摂取してる!!!うれしー!!!
3.Mirrors
Daichi Yamamotoさんという方?....とあれは.......ち!?鎮座DOPENESSさん!!
曲自体ははじめて聴いたが、画面越しの憧れがすぐそこにいることに感動で震えた。
4.Canvas
Kaneee(ケイ二―)さんとの曲、これすごくよかった。
見た目に反して甘い歌声だったなあ。
5.Conflicted
こちらはビートのみ。雨の情景とあっていて非常に「エモ」かった
6.サマージャム '95
まさかのスチャダラパーパイセン登場!!あつい!!一気に渋谷系にガラリ。
しかも「Summer Situation」とのマッシュアップになっている!
こんな最高の夏の始まりないっすね
7.Pointless 5
ここで、まさかの、待望の、
PUNPEEくん登場~~~~~!!!!!
一気に頭の中は、「や、やるんじゃ、あの曲」という淡い期待でいっぱいになった。
スチャダラパーと共にコラボ曲のPointless5を披露。
ゆるくてかっこいいラッパーの代名詞みたいな方々が集まっている。
8.Rock The Bells
あばれるくんみたいな情熱を持つKMCくんが最高潮のバイブスでやってきた。
※あばれる君も元ラッパーだからややこしい
腹に力を込めて汗垂らしながら系のラッパーも、嫌いじゃない。
9.Shall We
ここで、もう何が来ても驚かないけど!!!ZOT on the WAVEが登場!!!!
RAPSTAR誕生でずっと見てました!!!!
まさかすぎて...しかもYo-Sea、LEX...!!!
10.Final Destination
Campanella、Candeeさん登場
曲が終わると、STUTSくん、突然のポカリスエット一気飲みタ〜イム!
実はこれが次の曲の伏線になっているのさ...
11.99 Steps
ポカリスエットCMソングのこちらの曲。
こ、Kohjiyaく~~~~ん(わたし的メロいラッパー上位)
今更だけどラップスタア2024優勝おめざーーーーーす
Hana Hopeさんの清涼な歌声も良かった。
途中、CM出演の学生ダンサーくんたちもかっこよかった。
そんで雨!もうずっと降っていていいよ、と思うぐらい情景と似合いすぎている。
12. 夜を使いはたして
もうイントロで叫んだ。
ぎゃーーーーーーーーーーす!
お召しがえしたPUMPEEくんが、再登場!
AirPodsで何度も聴いた曲が、今目の前で行われてるよ....
頭の中には、みなとみらい駅のホームからけやき通り口に出るまでの長いエスカレータを登る自分の姿が。
いくつもの夜を使い果たそう、これからも!
13.Changes
ラストで空気感が変わる。
いくら待っても、これまでと同じようにゲストが登場することなく、STUTS君ひとりで曲が始まる。
後ろのモニターに映像が流れる。
今年4月に、若くしてこの世を去った、ラッパーJJJさんとの曲、Changes。
鎮火されない想いが溢れるかのように、子どもの様に泣きじゃくりながらMPCを叩くSTUTSくん。
STUTSくんだけじゃない。グリーンステージの観客も、空もみんな泣いてた。
雨が静かに、悲しみを包んでくれていた。
ーーーーーーーーー
(ああ、ああ、最高だった...)
体感一瞬で、STUTSくんのステージが終わってしまった。
やっぱりヒップホップ好きだ。今度ライブに行こう...
時刻は4時をすぎ、雨が降っているのもあるがいつのまにか涼しくなってきた。
ー いよいよ次の次が、達郎だ。
順に追っていったので、次の出演者James Blakeさんについても詳しく書くのが筋だが...
アツさと体力で、集中力が切れていたのと、達郎が目前に迫った緊張感とで....
正直一番うろ覚えなので、これ以上の失礼がないように、あえて触れないでおく。
「ダブステップの貴公子」とよばれ、ミニマムなリズムとメロディラインを持つ彼。
音の波動というか、唯一無二の存在感と異彩を放っていたことは確か。
ーーーーーーー
11時から18時にかけて、全4組の素敵なステージが終わる。
観客が入れ替わり、どことなく年齢層もぐっと上がった。
急に、人口密度が上がり、後ろからも押されているようだ。
観客全員が、グリーンステージに集まっているかのように錯覚する熱気だ。
ー 2日目だけチケットが完売したのもうかがえる。
見覚えのあるステージセッティングに、だんだんと視界が変わってきた。
リハがはじまり、いつものバンドメンバーが最終確認を行う様子も見える。
「No Photo」のサインを持ったスタッフが配置され、ここからは一切の撮影録画は禁止となる。
近くには、私と同い年くらいの男性が、「このために来たんです」と前のめりで話していた。
彼だけじゃない、そこかしこで、「山下達郎がフジロックに出るなら」とはるばる苗場までやってきた人ばかりだ。
ー ここにいる私も、その一人だ。
まもなく、時刻は19時。
ー 2時間ほど続いた雨は、嘘のように、いつの間にかぴたりとやんでいた。
いよいよ、彼が、やってくる。
72歳のレジェンドが、苗場の地に。フジロックに。
目の前にある、このグリーンステージに。