なつにつ記

過去と今を自由に飛びまわる私記/エッセイ。 レトロでファニーでちょっぴり不器用なくらし。 食いしん坊。 短編小説だと思って、お暇な時にぜひに。

きょうはなんのひ? 前編

 

ー ふんふんふんふふーん ふふふふふ ♪

ー ふんふんふんふふーん ふふふふふ ♫

 

いつにもましてご機嫌で、鼻歌が止まらない私である。

あの日からずっと、口ずさんでいるメロディ。

 

もしこの不可思議な文字列だけでお分かりの方がいたら、握手を求めたい。

まあ、勿体ぶる必要もないので、僭越ながら正解を歌わせていただきます。

 

ー マーリンルージュで 愛されて ♪

ー 大黒埠頭で 虹を見て ♫

 

そう、サザンオールスターズの言わずと知れた名曲、「LOVEAFFAIR〜秘密のデート」である。

youtu.be

サザンは、父の影響か学生の頃からファン。もちろんこの曲もお気に入りで、特に横浜に越してからは何度も聞いていたが、ここのところ、繰り返しヘビーローテーションしている。

 

なんせ油断するとすぐ、「脳内私ラジオ」のメインパーソナリティである「DJ私」が、

 

ー はい、ペンネーム"私"さんからのリクエストで、サザンオールスターズの「LOVE AFFAIR〜秘密のデート」をお送りいたしました。

続いてのお便り参りましょう、ペンネーム"私"さんからで〜す。

....こちらも曲のリクエスト頂いております。さっそくお応えして、お聞きいただきましょう、サザンオールスターズで、「LOVE AFFAIR〜秘密のデート」です、どうぞ。

 

というふうに、永遠ループがはじまるのだ。

 

でもこれも、幸せな悩み。そう、今年の私の誕生日のテーマソングなのだから。

なんでかって?これからゆっくり記させてほしい。

 

そんな幸せな誕生日を私が送れたのも、ひとえに幼馴染Aちゃんをはじめ、家族、そして親愛なる皆様のおかげだ。

感謝と愛を込めて、今年の私の誕生日の記録、日記を皆様に向けて送りたい。

 

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誕生日前日。

 

この前の日に、転職活動第一歩となる面接を終えた私。(前回の日記参照)

緊張で強張った体と疲れを癒すためにも、この日はお馴染みの「みうら湯」へと向かうことに。

 

いつものようにオープンと同時に、一番風呂を頂く。

ああ...やっぱり天然温泉、特に黒湯炭酸泉は最高だ!!気持ちいい、極楽極楽....

 

サウナもマスト。今日も今日とて、普段は目にすることのない昼の情報番組をお供に、汗をかきながら程よく蒸される。

 

出来上がったアチアチの体を水風呂で冷やしたのち、なにやら意気揚々と外へ向かう丸裸のキューピーちゃん。

 

実は彼女、ようやく「整う」がわかってきたらしい。これまでは、サウナ→水風呂→寝湯や座り湯と、どうやら間違ったルートを辿っていたというのだ。

一部分とはいえ、湯にあたっているといつまでもサウナによる火照りが冷めず、のぼせやすくなってしまっていた。

あくまでも「外気浴」は椅子や畳のベッドなどで、全身に風を浴びてリラックスすることが大事だと今更気づいたらしい。

 

そうして正しい「整い」を覚えた彼女は、まんまとその快感にハマっているというワケ。

 

...感想さんの「整う文化ディスりブログ」を読んでゲラゲラ笑っていたくせに。もう二度とそっち側の人を笑えないぞ。

 

キューピーちゃんは聞こえないふり。

 

(さあて、今日も整いますか..)

"整い"を覚えた自分に酔いながら、お馴染みのベット状の休憩スペースに上がろうとしたその時、

 

ツルッ

 

「あわっ」

 

段差を上った右足が、綺麗に滑った。

 

尻餅をつきそうになり、咄嗟にバランスをとろうと左足で支えようとしたところ、

 

左足のすねから足首にかけてを、お見事、強打!

 

(あ"っっっっ!!!!!)

 

その姿は、そう、まるでストリートダンスの技の一つ、「GET DOWN」そのものだった。

youtu.be

 

(い"っっっっっっっったい!!!!!痛い!)

 

皆様がくつろぐ温泉なので、声に出して痛みを訴えることもできず、悶える。

と、ここで背中に刺さる妙な気配に気づく。

 

(はっ!!!)

 

無論そこには、無様な私を心配そうに見つめる常連のおばあちゃまたち。座り湯からも、露天風呂からも、哀れみの目線が痛い。

皆さんが一斉に口を開く。

 

おばあちゃん1「滑るから気をつけてね」

おばあちゃん2「滑るから気をつけないと」

おばあちゃん3「滑るからね、気をつけて」

 

目の前の張り紙「浴室内は滑るのでお気をつけください」

 

穴があったら入りたい私「....っへへへ、あはは」

 

照れ笑いになり損ねた引き攣った笑みを浮かべつつ、ペコペコとご心配をおかけしたことを詫びる。

 

そして何事もなかったように寝転び直し、"整い"を再開しようと試みる。

 

 

.....

 

 

いやもう手遅れだよ。

 

 

なにも考えずリラックスして外気浴するどころか、ズキズキと痛む足に、先ほどの自分の痴態とおばあちゃまの言葉がリピートされる脳内に、とっくに「乱れ」てるよ。

 

調子に乗った罰にしては痛すぎるね、キューピーちゃん。

 

※現在、このように痛々しく腫れている。(閲覧注意)

黄色と紫のグラデが芸術的だネ。

私は今25歳になったから我慢できるけど、24歳だったら我慢できなかった。

 

気を取り直して湯上がりお昼ごはん。

例によって"チキン南蛮一択"かと思いきや、日替わりメニューがまさかの「唐揚げ甘酢あん定食」だったため、迷わずそちらを注文。(私は甘酢や黒酢に目がない)

 

おいし〜い、これは当たりだあ。

 

足の痛みから目を背けるようにご馳走を楽しんだのち、休憩スペースで「きのう何食べた?」を最新刊まで一気読み。よきかなよきかな。

 

再入浴して温まり直し、ドライヤーで髪を乾かしていると、携帯にメールの受信が。

見覚えのある文字に、一気に緊張感が高まる。

 

 

(あっ....!!!)

 

 

 

そう、実はこの時に、採用の通知を先方からいただいたのだ。

 

 

(慎重かつ厳正なる選考の結果.....採用)

 

(やった....やった!!!!)

 

 

「お客様、携帯電話の使用はご遠慮いただいてます」

「はっ!!あっ、すみません!!!申し訳ないです!!!!!」

一気に現実に引き戻されたが、心臓は大きくどくどくと脈打ち続けていた。

 

昨日面接に行って、次の日に良い知らせを頂くなんて、思いもしなかった。

24歳最後の日が、こんなに記念すべき日になるなんて、思いもしなかった。

 

ーーーーーーーーー

 

誕生日当日。

 

大粒の雨の音で目が覚める。

"誕生日は雨が降る"という私だけの、ジンクス。今年も、達成。さらにいえば、今年は警報が出るほどの荒れ模様。

 

雨は大好きだが、複雑な表情をしてるのには訳がある。

 

(なにも出勤前にこんなに降らなくても...)

 

そう、今年の誕生日は、残念ながらお仕事なのだ。社会人にとっては致し方ないが。

 

けれど、せっかくの誕生日なので、気持ち丁寧にメイクを施し、お気に入りの水玉のワンピースを装い、長靴がわりのブーツを履き、傘をさして出かける。

 

〜ただいまお仕事中〜

 

ただいま。はー疲れた、ご飯ご飯。

 

本当は、夕飯に1人誕生日パーティーに、外食に繰り出そうと考えてもいたけれど....

 

結果、作り置きのグリーンカレーをタッパのまま食べている。

いや、美味しいんだよ、これ。

だって何度もグリーンカレー作って上達したし、もも肉使ったからコクもあるし、ズッキーニもとろとろだし....

 

でも、1人で過ごす誕生日は、やっぱり少し寂しかった。

家族や友人、親戚の方々がSNSで祝ってくれなければ、会社の同僚が1番にプレゼントをくれなければ、なんとも虚しい誕生日になるところだった。

 

1人パーティーすら取りやめた理由は、昨日確定したばかりの転職を、今の職場に早く伝えなきゃ、という不安や焦りに包まれていたから。

 

こんな状況で外食しても、そのことで頭がいっぱいで楽しめないことは自明だったからだ。

私は一度自分ではどうしようもできない不安にとりつかれると、なかなかその沼から抜け出せないので、こうして誕生日当日にも、ズブズブと深みにはまっている。

 

案の定ベッドに入っても、終わらないぐるぐる思考。

夜に深く潜るなとあれほど....あ〜あ

 

実は昨夜も、考えすぎてほぼ眠れず寝不足状態だが、今日もどうやら眠れなさそうだ。

 

そうして、25歳になって初めての、長い夜は更けていった。

 

 

ーーーーーーー

 

誕生日から1日。

 

なにやら、朝から気合いを入れ直している彼女。

 

(よし!!!今日、言うんだ!!!!)

 

そう、今日ついに、上司の方に転職を打ち明けるのだ。

(どう受け取られようとも、私の人生の決定はすでに私が下したんだ。どんと構えるのみ!)

 

お守りがわりに手に持った携帯には、父と母からの応援メッセージが光っていた。

 

 

〜ただいまお仕事中〜

 

 

無事に、退職の旨、お伝えすることができた。

 

ようやく肩の荷が降りる、と同時に、新しい人生のチャプターへの実感、不安がじわじわと襲ってくる。

 

 

でも、ひとまずは。

 

25歳になった自分を、ここまで頑張って生きてくれた自分を、お祝いしてあげよう。

 

うん。

 

さあ、ついに明日は、2日遅れの、私の最大なる誕生日パーティーだ。

 

すっきりした面持ちの私の心の中には、10年前から変わらず誕生日を祝ってくれる、Aちゃんの顔が浮かんでいた。

 

 

 

ー 後編へ続く。