なつにつ記

過去と今を自由に飛びまわる私記/エッセイ。 レトロでファニーでちょっぴり不器用なくらし。 食いしん坊。 短編小説だと思って、お暇な時にぜひに。

秘密主義は噓つきのはじまり

「秘密が多いからこそ、対人関係で他者より優位に立てていると自覚していた。」

 

なにかの本か、漫画か、映画か、誰の言葉か、全く覚えていないけれど、

引用元が不明のこの言葉を、気が付くと戒めのように心の中で繰り返している。

 

私は、秘密主義かもしれない。たぶん、もしかしたら、捉えようによっては。

はっきり認めたくないのは、そんな自分にほとほと嫌気がさしているからだ。

 

自分のことについて、人に素直に話すことができない。

いつも、一線を引いて、相手にそのラインを越えさせないように会話を組み立てる。

 

そして、ここからが、誰にも言いたくない私の嫌な部分。

ただ秘密主義なだけならよかった。質問に対して、「無回答」を貫けばいいのに。

 

私は、ヒミツを隠すかのように、小さなウソをつく癖がある。

 

いつからこうなったんだろう。なんでだろう。

(おやめなさい!自分に対してネガティブになったとき、起源や理由を探る行為は無意味です!傷口に塩を塗るな!)

三者の私が止める声を無視する。でも今日は自分の深くまで潜りたい気分なのだ。明日はお休みだし。

 

ー ナンデヒミツニシチャウノ?

「いやー、やっぱり人の目を気にするからだろうねえ。あと完璧主義?

よく見られたい、相手が思い描く理想の自分でいたい、っていう他人軸の考え。」

 

ー ヒトノキモチナンテワカルワケナイノニ?

「痛いとこつくじゃん。そうだよ、本当はわかってるよ。

全部臆病な自分のせい。傷つくのが怖い、本当の自分を出して嫌われるのが怖い。」

 

ー ジシンガナインダネ、ジブンヲヒッシニ、マモッテルンダネ

「そうだよ、私ひとりだから。私のこと、自分で守ってあげないと。

そのためには、嘘だってつくよ。ばれなきゃいいよね?相手にとっても都合の良い嘘だし。」

 

ー デモケッカ、ジブンヲクルシメテルヨ。マモルドコロカキヅツケテイル。

ー “マタウソツイチャッタ”、“オモッテモナイコトイッチヤッタ” ッテ、イツモ。

「・・・」

 

ー ホントウハスナオニナリタイ、アリノママノジブンデアイサレタイ。ダヨネ?

「・・・うん。秘密を抱えて優位に立つよりも、真摯に素直に人と向き合いたいよ。

私のことをいろんな人に知ってほしいし、どんな私も、ありのままを好きでいてほしいよ。」

 

ー ガンバッテルノ、シッテルヨ。スコシヅツデモ、キミハカワッテル。

「そうだといいな。そうなりたいな。」

 

ー サア、ソロソロオカエリ。フカクモグリスギルトモドレナクナル。アト、イツモイッテルケド、

「夜に潜ったらダメ、でしょ。わかってるよ」

 

ー マタネ

「またね。」

 

元々、私はおしゃべりだ。

好きな人にはいくらでも話し続けられるし、なんでもバラしてしまう。

ありのままの私を好きになってくれる人がこの先ひとりでも増えて、後ろにいてくれたら、

怖がることなく、ありのままの私でいれるだろう。

だって、傷ついて泣いても「がんばったね」って慰めてくれると思うから。

 

 

ちなみに私の父も、秘密主義だ。長年連れ添う母にさえ、多くを語らない。

父の幼少期のことも、青春時代も、会社のことも、知らないことだらけ。

いつか、父が種明かしのように長い長いストーリーを語ってくれるその時を、

私は先の楽しみとして、急かさずに待っていたい。